2016/07/24

3.生物の多糖について

これまでに報告されている多糖類は、微生物、植物、および動物由来など起源の違いにより、その構造に関して大変興味深い報告がなされています。

セルロースは元来、植物の骨格をつくる多糖類であり、細胞や生体の構成成分としての役割を示すものが多いことが知られています。

デンプンやグリコーゲンは貯蔵エネルギーとしての役割があり、動物細胞などの細胞表層複合糖質は、種々の生体シグナルや標識の役割を持つものが多く、血液型など個を区別するためのものや、病気のマーカーとして異常を提示するシグナルでもあります。特に微生物や植物は細胞壁を有し、その構成成分として種々の多糖が知られています。中には細胞外へ分泌生産される多糖類も報告されています。ここでは微生物ならびに植物の機能性多糖類に関して簡単に紹介します。

微生物多糖は、色々な構造や性質を持つものが見出されている一方、セルロースなどの植物多糖にも見られるような性質を有するものも多いです。最近では、微生物多糖は、その性質や特徴からバイオマスなどのエネルギー面から植物多糖に代わるものとしても期待されています。微生物多糖は細胞内あるいは細胞外(あるいはその境界の細胞壁)に産生される場合が多く、菌体と分離されやすく回収しやすいなど工業生産にかなった生産系として評価されています。

特に細胞外多糖は種類が多く、酸性へテロ多糖などは微生物に特徴的なものです。これらの多糖は1種類の糖質からなるホモ多糖と2種類以上の糖質からなるヘテロ多糖に類別されます。

ホモ多糖ではD−グルコースからなり、主結合がα-1,6結合からなるデキストランや主結合がα-1,4-結合からなり規則的にα-1,6結合があるプルランなどのαグルカン、βグルカンでは主結合がβ-1,4結合からなるセルロースや主結合がβ-1,3結合からなるカードラン、さらに主結合がβ-1,3-結合からなりβ-1,6-結合の側鎖を持つシゾフィランやスクレログルカンなどのβ-1,3-グルカンおよびβ-1,3-1,6-グルカン類、主結合がD-フラクトースからなりβ-2,6結合からなるレバンなどのフラクタン、D−マンノースがα-1,3結合からなりリン酸を結合しているホスホマンナンなどが知られています。キサンタンガムは構成糖がグルコース、マンノース、グルクロン酸が構成比率として2:2:1からなるヘテロ多糖として有名で、古くからインクの原料にもなっています。これら以外にも最近では新しい微生物多糖が多く報告されています。これらの多糖類は医薬、食品、さらには産業用途として古くから広く使われてきました。

植物では、セルロースは有名です。セルロースは構造多糖としての役割が大きく、ポリガラクチュロン酸やアラビノグルカン類などのヘテロ多糖類と絡まりながらペクチン層を形成しています。これらは腸内細菌との関連も高く、大腸発酵のプレバイオティクスとしても有名です。加工品としての用途は、ジャムなどの原料として欠かすことができません。

大麦やカラスムギ類には、グルコースがβ-1,4-結合とβ-1,3-結合を交互に有するβ-1,3-1,4-グルカンが多く含まれることが知られています。藻類には、β-1,3-グルカン産生貯蔵するものも多く、ユーグレナ(ミドリムシ)はパラミロンという特異構造を有するβ-1,3-グルカンを産生します。

βグルカンとはに戻る