〜大野会長による寄稿〜 続βグルカンの魅力

はじめに

 宿前利郎教授(1982−2000年、第一微生物学教室、現、東京薬科大学名誉教授)から教室を引き継いでから、18年が経過した。宿前教室では設立当時(1982年)から、真菌由来の高分子性の免疫調節物質を研究対象として掲げ、その一端としてβグルカン研究に着手した。今日までその流れを継承しており、35年以上が経過した。宿前教授の定年時にそれまで行ってきた抗腫瘍多糖研究を総括し、βグルカンの魅力(東洋医学舎)が出版された。そこに記載された内容は、私自身のβグルカン研究の前半部分の総括の意味もある。そこで、本稿をスタートするにあたり、「βグルカンの魅力」を振り返ることから、始めることとし、タイトルは「続βグルカンの魅力」とすることとした。

 宿前教室の歴史をさらに遡ると、初代の宮崎利夫教授(1968−1982年、現、東京薬科大学名誉教授、元学長、元理事長)は、多糖の構造解析を研究テーマとし、植物多糖、病原性真菌の抗原抗原、肺炎球菌の莢膜多糖、漢方用茸の多糖など、様々な生物由来の多糖の構造解析を広範に行ってこられた。その中には、がんの民間療法で用いられてきた猪苓、霊芝、雷丸があり、抗腫瘍性βグルカンに関する研究が精力的に行われていた。宿前先生は、助教授時代に、免疫機能に興味をもち、その分野の研究に着手した。マクロファージの機能に関する研究、リンパ球の活性化物質に関する研究などである。教授就任時には免疫研究を推進すべく、真菌由来の高分子性免疫調節物質の研究をメインテーマとして掲げた。サブテーマの一つが真菌由来のマイトジェンに関する研究であり、もう一つが、抗腫瘍性βグルカンの構造と活性に関する研究である。「βグルカンの魅力」は後半のテーマに関する研究の総括である。

 「βグルカンの魅力」の冒頭には、βグルカン製剤であるクレスチン、レンチナン、ソニフィランが病院でがんの治療に使われるようになった、と記し、その分子メカニズムの探求というロマンのために研究を続けてきた、としてます。現在、癌治療、特に免疫療法の主役は抗体医薬となり、特異的な抗原に対する明確な作用のもとに効果が発揮されることが明らかになってきています。βグルカン製剤の一つの役割は終わりに近づいたようにも思われます。本稿では、新たな魅力探求の糸口とすべく、βグルカン研究を少しづつ、ひも解いていきたいと思います。

 

                                                             β‐グルカン協議会会長
                                                             東京薬科大学 薬学部教授
                                                             大野 尚仁

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